医療取材の微妙なさじ加減を誤ったために起こった悲劇
こんにちは、医療ライターの横井です。
先日、ある雑誌で別のライターさんが書かれた原稿のリライトのご依頼をいただきました。
実はその原稿、取材対象者の方のチェック段階で、ほぼ全面的に書き直しとなってしまい、
何度、見せても「自分の話した趣旨が伝わっていない」と、OKが出なかったそうです。
「このままでは記事を載せることができない」と慌てた編集の方から、
取材音声からのリライトという形でご依頼をいただきました。
ライターさんは毎号、そのコーナーを担当されているベテランで、
担当の編集者ももちろんプロ。
取材や執筆のやり取りの中に、なにひとつ問題はありません。
修正地獄の悲劇は、そのライターさんも編集者の方も、
医療分野の取材に慣れていなかったために起こったのでした。
どこの業界でも同じだと思うのですが、医療分野にも業界特有の背景があります。
例えば、同じ医師であっても、
勤務医の先生と開業の先生では見方や立場が異なりますし、
コメディカルの中でも看護師、薬剤師、臨床検査技師など
それぞれの職種で視点は異なります。
それだけではなく、医師や医療者が働いているのは、
大きな医療制度の枠組みの中であり、制度や組織などとの絡みもあります。
例えば、あるドクターが取材でこうおっしゃいました。
「臨床の場で患者さんと接していると、~~すべきだと自分は考えている。
ただ、これはまだ学会のエビデンスはなから、書いていいのかわからないが……」
医療はエビデンス・ベースド・メディスン(EBM:根拠に基づく医療)で動いています。
個々の経験や慣習に頼らず、科学的根拠に基づいた医療を提供するという考え方です。
とはいえ、日々、新たな発見や研究成果が出る世界であるのもまた事実。
エビデンスはないけれど、患者さんを診てきて得られた、医師の”肌感覚”というのは貴重な重要です。
ただし、この”肌感覚”の伝え方には、十分な注意が必要。
EBMに基づく医療という原則を踏まえた上で、読者にそれを伝えないと、
下手をすればその医師はとんでもない発言をしていると、捉えられかねません。
このようにデリケートな判断が必要とされるケースが、
医療分野の取材ではたびたびあります。
そこは、たくさんの医療関係の取材を重ねてきた、
医療ライターの得意とするところ。
冒頭のケースは、まさにこの微妙なさじ加減を誤ってしまったケースなのですね。
たくさんの企画やページを抱え、多忙な編集者の方にとって
何度も修正を繰り返すのは避けたいところ。
こんな時は、医療分野の取材経験豊富な医療ライターに
どうぞお声がけくださいね。
読んでいただきありがとうございました。