入院日数短縮は国の厳命、でも医師だって本当はもっと診てあげたい
こんにちは。医療ライターの横井です。
あるインタビューで、病院経営者の立場にある方が思わず漏らした本音が印象的だったので、ご紹介したいと思います。
患者からは悪名高い(?)入院日数の短縮。
国の方針とはいえ、病気が十分に治っていないのに、病院からは退院を迫られて、不安な思いをしたことがある人もいるかもしれません。
例えば、
脳梗塞で倒れて入院、リハビリで少しは回復したけれど、まだまだ身体が不自由なのに、病院から退院を促された――
肺の病気で人工呼吸器を装着。それなのに急性期(症状の変化が大きい時期)は過ぎたので、自宅へ戻って療養するように言われた――
入院先の病院からこんなふうに言われたら、「病院から追い出された」と感じてしまっても仕方ないかもしれません。
どうして病院は、患者を早く退院させようと躍起になっているのでしょう?
それは、一言でいうと患者さんをいつまでも入院させていては、病院経営が赤字になってしまうから。
日本は海外と比べて入院日数が長く、医療費が膨らむ原因の1つになっています。そこで国の方針として、入院日数が一定の日数を超えると、診療報酬という病院に支払われるお金が引き下げられる仕組みが取り入れられているのです。
病院側としても国の方針に従わないわけにはいきませんから、やむを得ないという側面もあるわけです。
ですが患者さんからすれば、
「もっとリハビリしたかった」
「経管栄養のチューブだってついているのに、自宅になんか帰れるわけがない」
などと、恨み節が聞こえてくるのも当然でしょう。
そんな中、ある急性期病院の院長がもらした本音が印象的でした。
「在院日数、入院単価――そんなものを気にしなくてすむのなら、本当は医者だってずっと1人の患者さんを診ていてあげたい」
「現場の医師たちはできるだけ長く患者さんを診てあげたいから、放っておくと平均入院日数は伸びる一方。そうすると診療報酬を下げられて、病院経営は赤字になる。赤字だといってつぶれるわけにもいかないから、だから、経営者としての私の仕事はせっせと現場の尻をたたいて、入院日数を短くさせること」
「でも私だって、現場の医師と気持ちは同じ。こんなに具合が悪そうなのに、あと1日くらいいさせてやればいいじゃないかと思う時もある。でも、病院がつぶれたら、そこに通う患者さんはもっと困ることになるからね」
病院長は、そんなふうに複雑な胸の内を語ってくださいました。
この話を聞いて、病院の先生たちも、本音では「もっと患者さんを診てあげたい」と思っているんだと、1人の患者としてちょっと気持ちが温かくなりました。
もちろん、こうした本音は記事に書くことはできません(媒体の性質にもよりますが)。
ですが、取材対象者の本音を知った上で記事を書くのと、そうでないのでは、出来上がった記事に天と地ほどの差がある、
と私は思います。
医師や看護師の本音を踏まえたうえで、患者さんに伝わる形で文章を綴る――
そこが医療ライターの醍醐味です。
お役に立てることがあれば、お気軽にご相談下さいね。
読んでいただき、ありがとうございました!