「良い医療」を評価すればするほど「患者の負担は増える」のはなぜ?
こんにちは。医療ライターの横井です。
診療報酬改定にからんで、厚生労働省がよく使う言葉に、「~することを評価しました」というものがあります。
この「評価する」というのは、ようするに診療報酬点数を上げること。
イコール病院にたくさんのお金を支払ってあげますよ、ということです。
2年に1回の診療報酬改定時期には、 1点の上げ下げを巡って、病院側と医療費と支払側(健康保険組合など)の血で血を洗う、はげしいやり取りが繰り広げられるのがお約束です。
そんな診療報酬の話題を取材していたときのこと。
ある厚生労働省の官僚がいったセリフが衝撃的でした。
「医師などの行為を高く評価する、ということは、イコール患者さんの負担が増える(医療費の支払いが増える)ということ。そのことは常に忘れてはいけないと思っています」
このひと言が衝撃でした。
長年、医療者の声を取材をしてきた私は、
「この行為は患者さんにとって、ためになる。だから診療報酬(患者にとっては料金)を上げて、もっと取り組めるようにして欲しい」
「やってあげれば患者さんにとってメリットが大きいのに、診療報酬が低いから(やっても儲からないから)、できない」
という医療従事者側の意見を聞いて、
「うんうん、なるほど。確かにこれは患者さんのためになる。点数がついて、正当に評価されるべきだ」
「いやいや、そこは点数に関係なく、医療従事者ならやるべきことでしょう」
などと取材者の視点で感想を持ったりしていたのです。
ですから、考えてみたらごくごく当たり前の、
患者さんにとってメリットの大きい、良い治療ができるように医療行為の評価を上げれば上げるほど、患者さんにとっては負担が増える――こんなパラドックスがあることを、今まで完全に見過ごしていたのでした。
とはいえ、医師がよい治療をできるように診療報酬をあげることが、
最終的には患者さんのためになることは間違いないわけですが、そこのさじかげんは非常に難しいものだと感じます。
同じ業界で取材を続けていくと、視点が偏ってしまうことが一番、恐ろしいのですが、
今回のできごとは改めてそのことを痛感させられたできごとでした。
当たり前の、でもとても大切な視点を教えてくれた、あの時の行政官さま、どうもありがとうございました!
読んでいただき、ありがとうございました!